消化器科について

こんにちは。外科医のもぐたんです。
みなさん、街中で見かける「内科」「胃腸科」「消化器内科」「外科」「一般外科」のクリニック、どう違うのか気になったことはありませんか?
いざ大きな病院を紹介されると、紹介状には「消化器外科」「胃腸外科」「肝胆膵外科」なんて専門的な名前がずらっと並んでいて、
「結局、どこに行けばいいの!?」 ってなったこと、ありませんか?
実は、内科と外科の違いはシンプルです。
一般的に、内科とは薬物療法や生活指導などを通じて疾患の診断と治療を行うもの。主に非侵襲的(身体に負担のかからない)な手段で疾患管理を行う。
とされています。
一方、外科とは疾患の診断や治療に侵襲的(身体に負担のかかる)な”手術”を用いて、体内の異常な組織や臓器を直接取り除いたり、修復したりすることで、患者さんの健康状態の改善を目指します。
ざっくりいうと、内科は”クスリ”、外科は”手術”をするところ。ということになりますが、実際には内科で内視鏡手術を行っていたり、外科で抗がん剤を扱っていたり曖昧な部分もあります。
今回は、みなさんのおなかの悩みに寄り添って、消化器内科と消化器外科の違いを分かりやすく解説していきます。
消化器内科について
消化器内科は内科の中でも、消化器系の病気を専門に扱う診療科です。
まず消化器系とは、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門、肝臓、胆嚢、膵臓など、食物の消化や吸収に関わる器官を指します。
よくクリニックなどで見かける「消化器内科」や「胃腸科」が、消化器系の病気を診るお医者さんということですね。
消化器内科では、主におなかの病気の「原因」を探り、全身の状態を評価することから始まります。
要は、「診断学」なのです。
その後、生活指導や薬物療法、内視鏡を使った治療を行い、疾患の進行を抑えたり、症状を緩和します。主に慢性疾患や内科的にコントロール可能な病気を扱います。
また、内視鏡(胃カメラや大腸カメラ)を使って診断や治療を行うことが特徴です。
内視鏡では、ポリープや早期のがんの切除も行い、これらは基本的に消化器外科ではなく、消化器内科が得意とする治療です。
内科は診断学といったばかりなのに、”治療もしてるじゃん!!” となりますが、内視鏡が開発された当初は観察、検査、診断しか出来なかったものが、技術・機器が発達するにつれて、切除などの治療も出来るようになっていきました。
切除できるものも徐々に適応拡大しており、今では外科手術をせず患者さんの負担が比較的少ない状態で早期癌を切除できるようになっています。
消化器内科は、内視鏡を用いた手術的治療も行える内科ということですね。
消化器内科が主にみる疾患としては、以下のようなものがあります。
機能的な疾患:胃食道逆流症 機能性ディスペプシア 過敏性腸症候群 虚血性腸炎 便秘
炎症性疾患:潰瘍性大腸炎、クローン病
食道、胃、腸などの感染症:ピロリ菌感染、胃腸炎
消化器がんなどの腫瘍:胃、大腸のポリープや早期癌などの腫瘍
これらの疾患に関しては別の機会に解説させていただくことにします。
消化器外科について
消化器外科は、外科手術を通じて病気を診断したり、”病気の根本原因(腫瘍や病変)”を取り除いて、根治や機能改善を目指します。
進行したがんや転移が広がった場合、症状の緩和やQOL(Quolity Of Life=生活の質)向上を目的とした手術(姑息的手術)を行うこともあります。
内科に対して、外科は「治療学」なんですね。
やはりイメージが強いのは、ブラックジャックを始め、絶対失敗しない女医さんなど当然ながら癌の手術療法ですよね。
ただ、「治療」というものは、「診断」があってこそです。
特に癌などの腫瘍性疾患に関しては、胃カメラや大腸カメラやその他の検査など専門的な検査を受けて、診断がなされ、どのくらいの進行度なのか判断されたうえで、治療の選択肢の1つとして初めて外科手術が上がることになります。
病気の詳細が分からず、とりあえず消化器外科へ紹介されることもありますが、まずは消化器内科でしっかりと「診断」してもらうことが重要です。
消化器外科医でも胃カメラや大腸カメラを行うことはありますが、早期癌の内視鏡的切除や、微小な早期癌などの発見はかなり研鑽を積まなければ出来るものではないので、消化器内科医の足元にも及ばないことがほとんどでしょう。
その分外科医として、手術技術には自信があるはずですからね。
一方、腹腔鏡手術は、全身麻酔を行いおなかの中(腹腔内)を直接観察して行う、外科医が行う手術のことです。
名前が似ていて混同しやすいですが、内視鏡とは別のものになります。
また別の機会に説明しようと思います。
ただ、最近は先程のように抗がん剤を外科で行うケースも見受けられます。
これは、術前化学療法や術後に行う術後補助化学療法など手術に関連し手術前後に抗がん剤を行う場合、
- 手術前にどの程度行うのか
- 抗がん剤を終えてからどのくらいのタイミングで手術を行うのか
- 手術を終えてからどの程度で抗がん剤を開始するのか
これらは内科医より外科医のほうが患者さんの状況を把握出来るのからです。
腫瘍内科医という”抗がん剤”、薬物治療のエキスパートがいる場合はお願いすることになりますが、一般的な消化器内科医、消化器外科医に比べるとまだまだ少なく、大きい病院にしかいないことも多いです。
また消化器外科医は、癌の手術だけでなく、良性疾患の手術も行います。
ヘルニア、胆石症、痔などが代表的なところです。
基本的に消化器内科と消化器外科は同じ消化器領域を扱っていますので、臓器や疾患も同じものを扱うことが多いですが、これらは外科特有なものといえるでしょう。
ヘルニアとは、腹壁や横隔膜の弱い部分から腸や腹膜、脂肪などが飛び出す、いわゆる「脱腸」のことで臍部や鼡径部に発症することが多く、根治には手術を要します。
また痔は一見ありふれており、どこのクリニックでも診てくれそうな疾患ですが、実は肛門という臓器自体がとても専門性が高く、本当の意味で病態を理解して治療に当たっている医師は多くなく、治療も難しい疾患です。
実は私も苦手です笑
主に大腸外科だった医師から派生して肛門・痔の専門医になることが多い印象です。
以下が主に消化器外科医が扱う疾患になります。
腫瘍性疾患:いわゆる癌。食道癌、胃癌、十二指腸癌、小腸癌、大腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、膵臓癌、など手術で根治を目指す疾患
構造的疾患(良性疾患):ヘルニア、胆石、痔、腸閉塞、など手術を伴う良性疾患
腹腔内の感染性疾患:虫垂炎、胆嚢炎、消化管穿孔、など主に緊急手術で治療を行う疾患
消化器内科と消化器外科の違いについて
さて、これまで消化器内科と消化器外科をそれぞれ解説してきました。
それぞれに特徴的なところはあるものの、近年は科学技術の進歩によって内科と外科の境界は曖昧になりつつあります。
治療の観点から見ると、消化器内科での内視鏡治療が進歩し、適応範囲が広がっています。
侵襲、非侵襲という面からみても、消化器外科でいえば侵襲の大きい開腹手術の件数が少なくなり、腹腔鏡やロボット支援下手術のような低侵襲手術の件数が格段に増えてきました。
それでも「診断・全身管理」=内科学、「外科的治療」=外科学、という基本的な分業体制は医学教育や臨床の現場では今も重要な位置づけを持っています。
これらがうまく連携・協力することでスムーズな診断→全身管理→治療へと繋がっていくのです。
受診時に気をつけること
これらを踏まえて消化器内科、消化器外科へはどのように受診するのが良いでしょうか。
受診の際は、自分の症状をできるだけ詳細に伝えることが大切です。
痛みや不快感、消化器系の症状について、わかる範囲で伝えましょう。
- いつから
- どこが
- どのように
- どの程度で
- 頻度はどのくらいなのか
- なにかきっかけはあったのか
- 食事に関連していたのか
- 周りの同じ症状の人はいるか など
これらをまず消化器内科を受診し相談するのが良いでしょう。
しっかり原因を探り、全身の評価をしてもらい治療方針を立てていく必要があります。
検査の結果、消化器外科で取り扱う疾患であればそこから紹介状を書いてもらうことになるでしょう。
おヘソや鼡径部がぽっこりと膨れる「脱腸」のような症状や、「痔」の症状であれば、
最初から消化器外科を受診するのでも良いでしょう。
一方、上記の中でも、
- 急激な
- とても強い
- 冷や汗やふるえがくるような
- 我慢の出来ない
消化器症状や腹痛の場合は、消化器外科や救急外来へのなるべく早く受診が必要となります。
速やかにクリニックから消化器外科宛の紹介状を書いてもらったり、場合によっては救急車を呼ぶ必要がある場合もあるかもしれません。
症状がはっきりせず、自分で消化器症状なのかはっきりしない場合、専門家を判断が出来ない場合は総合病院の総合内科や一般内科を受診するのも良いでしょう。
まず、総合受付でどこを受診すればよいのか聞いてみると適切な科に振り分けてくれます。
しかし、このように順序を考えていても、なんだかんだで時間がかかったり、
途中で、どうしよう?となってしまう可能性もあります。
そのようにならないために、前もって定期的に診てもらったり、有事の際にすぐに相談出来る「かかりつけ医」クリニックの存在がとても重要となります。
そこから消化器内科、消化器外科への紹介状を書いてもらえるとスムーズな専門家への受診に繋がります。
まとめ
消化器内科と消化器外科の特徴、違いについて解説しました。
消化器内科は、検査を中心に疾患の原因を特定し、治療方法や進行を抑える方法を提供する診断と管理を担当します。
一方、消化器外科は、診断結果に基づいて、手術を通じて病気の根本原因を取り除き、治療を行います。
近年、内科と外科の境界は技術の進展により曖昧になりつつありますが、基本的にはまず消化器内科でしっかり診断を受け、その後の治療に関して消化器外科に委ねる形が理想的です。
この連携がスムーズに進むことで、最適な治療が提供されます。
受診の際に少しでもお役に立てれば幸いです。
今日のもぐったー:
はじめまして。外科医のもぐたんです。ちょっとしたおまけで作ってみました。どうしても専門的な内容だと他人行儀で行儀良い感じの文章になってしまうので、ここではあまり気にせず自分の思ったこと感じたことを自由気ままにつぶやいていこうと思っています。今後とも末永くよろしくお願いします!!
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