知っておきたい消化器科の検査のこと。外科医が詳しく解説!~入院編①~

知っておきたい消化器科の検査のこと。外科医が詳しく解説!~入院編①~ おなか不思議メモ
知っておきたい消化器科の検査のこと。今回は、「入院編」になります。前回の必ず外来で出来る検査と比較して、大きな病院でしか受けられない、または入院で受けることの多い検査を対象にしています。特に入院で受ける検査は外来での検査と異なり、消化器科でしかやらない検査が多く、専門性の高い内容になっています。前半戦。
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知っておきたい消化器科の検査のこと。外科医が詳しく解説!~入院編①~

こんにちは。外科医のもぐたんです。

この記事では主に大きな病院でしか受けられない専門的な検査について前半と後半に分けて解説しています。

今回は、「入院編」になります。

前回の外来編はこちらから↓↓↓

前回の必ず外来で出来る検査と比較して、大きな病院でしか受けられない、または入院で受けることの多い検査を対象にしています。

特に入院で受ける検査は外来での検査と異なり、消化器科でしかやらない検査が多く、専門性の高い内容になっています。

前半では、

  • 小腸内視鏡
  • CT(特に造影CT)
  • MRI

について解説しています。

後半は、

  • 内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)
  • 超音波内視鏡検査(EUS)
  • 消化管運動検査

について解説していきます。

後半戦を先に見たい方はこちら↓↓↓

それでは早速みていきましょう。

主に大きな病院などで受ける専門的な検査

小腸内視鏡 

小腸鏡は、その名の通り小腸を詳しく観察するための内視鏡検査の総称です。

胃カメラは口から十二指腸まで、大腸カメラは肛門から大腸の入口までで、基本的に小腸までは届きません。

しかし小腸は2-3メートルから5-6メートルと非常に長く観察が出来ない臓器でした。

そのため現在はカプセル内視鏡 と ダブルバルーン内視鏡 という特殊な方法が使われています。

1)カプセル内視鏡検査

カプセル内視鏡は、カメラが内蔵された小さなカプセルを飲み込むことで、小腸内の様子を撮影する検査です。カプセルは腸の動きに従って自然に移動しながら、画像を撮影して記録装置に送信します。

メリット

  • 負担が少ない:口から内視鏡を入れる必要がなく、痛みを感じることなく検査ができる。
  • 小腸全体を観察できる:通常の内視鏡では届かない小腸全体をチェックできる。
  • 日常生活の制限が少ない:カプセルを飲み込んだ後は、通常の生活が可能(激しい運動は避ける)。

デメリット

  • 検査中に処置ができない:異常が見つかっても、その場で治療や組織採取(生検)はできない。
  • カプセルが詰まる可能性:腸に狭窄(狭くなっている部分)があると、カプセルが停滞することがある(この場合は緊急で取り出すことが必要)。
  • 詳細な位置が分かりにくい:カメラは腸の動きに任せて進むため、病変の正確な位置を特定しにくい
2)ダブルバルーン内視鏡検査

ダブルバルーン内視鏡は、2つのバルーン(風船)が付いた特殊な内視鏡を使い、小腸の奥深くまで到達できる方法です。

バルーンを交互に膨らませて小腸をたぐり寄せながら観察を行うため、より詳細な検査や治療が可能です。

シャクトリムシのように小腸を手繰り寄せながら観察を行います。

メリット

  • リアルタイムで観察・処置が可能:直接病変を観察し、組織採取(生検)やポリープ切除、止血処置などができる。
  • 詳細な位置を把握しやすい:バルーンを使って少しずつ進むため、病変の正確な位置を特定しやすい。
  • カプセル内視鏡で異常が見つかった場合の次の検査として有用

デメリット

  • 体への負担が大きい:口または肛門から挿入するため、通常の内視鏡と同様に麻酔や鎮静が必要になる。
  • 検査時間が長い:通常の内視鏡よりも時間がかかり、場合によっては1時間以上になることもある。
  • 全小腸を検査するには限界がある:一度の検査で全ての小腸を観察することは難しく、必要に応じて経口(上部)・経肛門(下部)の両方から行うこともある。

カプセル内視鏡 は、負担が少なく小腸全体を観察できるが、リアルタイムの処置はできない。
ダブルバルーン内視鏡 は、直接観察しながら処置もできるが、体への負担がやや大きい。

これらは互いに補完する検査であり、カプセル内視鏡で異常が見つかった場合に、ダブルバルーン内視鏡を用いて詳しく調べたり治療を行ったりします。

どちらの検査を選択するかは、症状や目的に応じて医師が判断します。

造影CT

CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)検査とは、X線を使って体の内部を輪切り(断面)の画像として撮影する検査です。

通常のレントゲンは1方向からの平面画像しか得られませんが、CTではX線を360度方向から照射し、コンピュータ処理によって複数の断面画像を組み合わせ、立体的に体内を詳細に描き出すことができます。

コンピュータで処理することで、より詳細な立体的な画像を作ることができます。

今回は普通の単純CT検査ではなく造影剤を使った造影CT検査にフォーカスを当てて解説していきます。

造影CT検査は「ヨード造影剤」という特殊な液体を静脈に注射して行います。

ヨード造影剤はX線を通しにくい性質を持ち、血管や臓器に取り込まれることで、それらの構造をより鮮明に映し出すことができます。

造影剤は撮影直前に点滴で投与され、血流に乗って全身を循環します。その結果、腫瘍や炎症の広がり、血管の異常などを詳しく評価できるようになります。

単純CTと造影CTでは、診断の精度に大きな違いがあります。

特に消化器領域では、造影剤を使用することで癌の診断率が向上し、炎症や血管異常の評価がより正確になります。

そのため、造影剤を使用できる状況であれば、造影CTが推奨されます。

よほど大きく、周囲に浸潤している腫瘍であれば造影剤がなくても診断は可能ですが、早期の小さい癌やその臓器に限局した病変では造影剤がなくては診断が不可能なものもあります。

急性腹症では、炎症を起こしている臓器の特定や、腸管の血流評価を行うことで腸管の虚血や壊死を診断することが出来、緊急手術が必要かを判断しています。

急性腹症を対象とした研究では、造影CTが診断に必要不可欠であった症例が13.8%、診断をさらに容易にし重症度判定に有用であった症例が48.0%という報告もあります。

参考文献:Effect of contrast-enhanced computed tomography on diagnosis and management of acute abdomen in adults
Clin Radiol. 2002 Jun;57(6):507-13.

なので昔の救急外来では、診察を行って、血液検査やレントゲン、エコーをやって…と順番に病気を特定していく、

とやっていました(医師的にはその診察から診断に至る過程が醍醐味!?)

今は何よりもまずCT(出来れば造影)を撮ってしまって、そこから戦略を考える。

なんてこともよくあります。

また外科医は術前に造影CTで血管の走行を確認することで、術野をイメージし、プランを決定することで手術を滞りなく行うことが出来ます。

このように今や各分野において最も重要な検査といっても差し支えはありませんが、一般のクリニックより総合病院や専門病院で行われるのには下記の理由があります。

  • アレルギー反応
  • 腎機能障害

造影剤も薬なのでアレルギーを起こすことがあり、特にヨードアレルギー甲状腺の病気でヨードに過敏な場合に発症することがあります。

中には稀ですがアナフィラキシーショックを起こすこともあるため、マンパワーの少ないクリニックでは行いにくいです。

また造影剤は腎臓を通じて尿として排泄されますが、腎機能が良くない場合、体内から抜けにくくなりさらに腎機能が悪くなる場合があるため、病院のほうが行いやすいです。

ただし、クリニックや小さな診療所でも造影CTを行う施設はあります。

その場合、アレルギーや腎機能の管理が適切にできるかどうかを確認した上で、実施されることが一般的です。

もしクリニックで造影CTができない場合でも、大きな病院と連携して適切な検査を受けることができるので安心してください。

ちなみに、造影剤を投与すると、一時的に体がカーッと熱くなる感じや、喉の奥に金属のような味を感じることがあります。

これらは造影剤の特性による一時的な生理反応であり、アレルギー反応ではないため心配ありません。

妊婦の場合、胎児に造影剤が影響する可能性があるので妊娠の可能性がある場合は必ず伝えてください。

MRI

MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)検査とは、磁場(磁石の力)と電波を使って体の内部を撮影する検査です。

CT検査はX線を使うのに対し、MRIは放射線を使わないため、被ばくの心配がありません。

MRIは体内の水分の動きを捉えて詳細な画像を作成できるため、特に水分を多く含む組織(脳・肝臓・腎臓・関節・筋肉など)や脂肪を含む組織(軟部組織)を鮮明に映し出します。

よく誤解されることですが、「MRIはCTよりも精密な検査」と思われがちです。しかし、実際にはMRIとCTでは評価に適した組織が異なるだけであり、どちらが優れているというわけではありません

あくまでよくみえる、評価できる組織に違いがあるだけです。

消化器領域において、MRIは水分(膵液や胆汁などの消化液)や脂肪を含む臓器の構造・走行を詳細に評価できるため、肝臓・胆嚢・胆管・膵臓、そして膵液が流れる膵管の評価に優れています。

肝臓では、特殊な造影剤(EOB-MRI)を使用することで、がんと良性腫瘍をより正確に識別できます。

MRIにも造影剤を使った検査があるんですね。

また、胆管の走行を評価することで、肝切除や胆嚢切除を行う際の術前情報として役立ちます。

膵臓では膵管の走行や、膵嚢胞性疾患・粘液産生腫瘍の診断に有用です。

また、悪性腫瘍(がん)が周囲の臓器にどの程度浸潤しているかを判断する際にも優れています(例:骨盤内の直腸がんなど)。

このように、MRIは腫瘍の質的診断(良性・悪性の鑑別)においてCTよりも優れた情報を提供します。

一方で、MRIにはいくつかのデメリットもあります。

  • 撮影時間が長いため、閉所恐怖症の方には苦痛を伴うことがある
  • 場を使用するため、体内に金属(ペースメーカー・人工関節など)がある場合は検査が制限される

つまり、CTとMRIのどちらかが一概に優れているわけではなく、診断の目的に応じて適材適所で使い分けることが重要です。

前半のまとめ

今回は、入院が必要な専門的な検査について解説しました。

  • 小腸内視鏡
  • CT(特に造影CT)
  • MRI

について解説してきました。

小腸内視鏡には、負担が少ないが処置ができない「カプセル内視鏡」と、詳細な観察・治療が可能だが負担の大きい「ダブルバルーン内視鏡」があります。

造影CTは、ヨード造影剤を使用して腫瘍や血管の異常を鮮明に映し出し、診断の精度を向上させる重要な検査です。

一方、MRIは放射線を使わず水分や脂肪を多く含む組織の評価に優れ、特に肝臓・胆管・膵臓の診断に役立ちます。

それぞれの特徴を理解し、適切な検査を受けることが大切です。

気になる後半戦はこちらから↓↓↓

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