
こんにちは。外科医のもぐたんです。
この記事では主に大きな病院でしか受けられない専門的な検査について前半と後半に分けて解説しています。
今回も引き続き、「入院編」になります。
前半戦はこちらから↓↓↓
今回の後半戦は、
- 内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)
- 超音波内視鏡検査(EUS)
- 消化管運動検査
について解説していきます。
特に前2つは消化器、特に肝胆膵領域では必須の検査で重要な検査になります。
なかなか聞き慣れない検査ですのでそれぞれわかりやすく、現場に即した形で解説していきましょう。
内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査(ERCP)
急に聞き慣れない言葉が出てきましたね。
ERCPは、胆管や膵管を詳しく調べるために内視鏡を使って行う検査 です。
正式名称は「Endoscopic Retrograde CholangioPancreatography」で、
日本語では「内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査」といいます。
名前が長くて難しく感じるかもしれませんが、要するに、
✅ 内視鏡を使って
✅ 通常の流れとは逆向きに(逆行性)造影剤を流しながら
✅ 胆管や膵管を評価する検査
ということです。
逆行性ってなんでしょうか?
胆汁や膵液は、それぞれ次のようなルートで流れています。
- 胆汁 → 肝臓 で作られ、胆管 を通って 十二指腸 に流れる(順行性)。
- 膵液 → 膵臓 で作られ、膵管 を通って 十二指腸 に流れる(順行性)。
このとき胆管と膵管は十二指腸の乳頭という部分で胆管、膵管、乳頭が同時に合流する形となります。
道路でいう、三叉路のような状態です。
ただし、胆汁や膵液は「一方通行」なので、十二指腸側から胆管や膵管へは逆流しません。
通常は胆管と膵管もお互いに膵液と胆汁が混じり合うことはありません。
ERCPでは、内視鏡を十二指腸まで進め、十二指腸乳頭(胆管と膵管の出口)から逆向きに造影剤を流すことで、胆管や膵管の状態を詳しく調べます。
このように、「通常の流れとは逆向きに造影剤を入れる」ことが 「逆行性」 という意味です。
ERCPでは、
✅ 胆管や膵管の狭窄(狭くなっている部分)
✅ 胆石や膵石の有無
✅ 胆管がん・膵がんなどの腫瘍の診断
✅ 胆管や膵管の炎症(胆管炎・膵炎)
などを行えます。
ERCPのメリットとしては、
✅ 診断だけでなく、そのまま治療もできる!
- 胆管や膵管の 狭くなっている部分を広げる
- 胆石や膵石を 取り除く
- 胆汁や膵液の流れを改善するための ステント(管)を入れる
一方、ERCPのデメリットとしては、
- 合併症のリスクがある(膵炎や胆管炎を引き起こすことがある)
- 検査時間が長く、高度な技術が必要
内視鏡で行うため手術に比べれば低侵襲ですがリスクもあり、慎重な適応や何より検査者の高い技術が必要になります。
肝胆膵外科医としては術前だけでなく術後もお世話になることが多い検査で、通常の検査時間に比べると長くなるため、消化器内科の先生の労力も大変です。
いつも頭が上がりません。
超音波内視鏡検査(EUS)
これもまた聞き慣れない検査ですね笑
EUSは、内視鏡に超音波装置を搭載した特殊な検査 です。
正式名称は「Endoscopic UltraSonography」で、
日本語では「超音波内視鏡検査」といいます。
つまり、内視鏡を使って消化管の内部から超音波を当て、より詳しく臓器を観察する検査 です。
検査の方法は通常の胃カメラと同様です。
通常の超音波検査との違いとしては、
- 通常の超音波検査(エコー) → 皮膚の上から超音波を当てて観察
- EUS → 内視鏡を使って消化管の中から超音波を当てる
EUSのメリットとして、
✅ 消化管の壁や周囲の臓器をより詳細に観察できる
✅ 胃や腸の中の空気や腹壁、脂肪、骨が邪魔にならない
✅ 超音波の距離が近い分、高精細な画像が得られる
胃や十二指腸まで内視鏡を挿入して、壁越しに隣接した臓器を観察することで特に肝臓、胆道(特に胆管)、膵臓なども詳細な画像を得られます。
CTやMRIはX線や磁場を使って体の外から画像を作成するため、全体像の把握に優れます。
ERCPはX線透視を用いて胆管・膵管の内部を直接造影し、形態異常や閉塞の評価が可能ですが、透視画像のみで細かい組織の観察はできません。
一方、EUSは内視鏡の先端から超音波を当て、リアルタイムに胆管・膵管やその周囲の組織を詳細に観察でき、さらに組織を採取して診断することも可能です。
食道や胃、大腸などの消化管では腫瘍に直接超音波を当てることで、表面には見えない粘膜下の腫瘍の位置と大きさ、浸潤の度合い、悪性の程度、周囲の臓器との位置関係、周囲のリンパ節の状態を知ることが出来ます。
また、EUSの大きな利点の一つに、「超音波ガイド下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)」という技術があります。
これは、超音波で病変を確認しながら、細い針を使って直接細胞を採取する方法で、腫瘍が良性か悪性かをより高精度に診断することが可能です。
従来の画像検査では判断がつきにくい病変に対しても、組織を直接採取することで確定診断につなげることができます。
この検査もERCP同様、消化器医として高い専門性、技術が必要な検査です。
特に肝胆膵領域では診断や内科的治療において目覚ましく進歩している検査で日々とてもお世話になっています。
消化管運動検査
消化管の動きを調べる検査で、各臓器でそれぞれ検査を行います。
1)食道内圧検査(食道の運動検査)
細いカテーテル(管)を鼻から食道に挿入し、食道の収縮や圧力の変化を測定する検査です。
飲み込みの異常(嚥下障害)や、食道が適切に収縮しているかを評価できます。
メリット
- 食道の動きや圧力を詳細に測定し、嚥下障害や逆流性食道炎の診断に役立つ。
- 食道の異常収縮(アカラシアなど)の診断に有用。
デメリット
- 鼻からカテーテルを入れるため、不快感がある。
- 食道の一部の動きしか測れず、全体の機能評価には他の検査(X線造影検査など)も必要な場合がある。
2)胃排出能検査・胃内圧検査(胃の運動検査)
食べ物が胃から小腸へ適切に排出されるかを調べる検査です。
胃の運動が低下すると、食後の胃もたれや吐き気などの症状が出るため、胃の機能異常(機能性ディスペプシアなど)の診断に用います。
✅胃排出能検査(シンチグラフィー):放射性物質を含んだ食事を摂取し、胃からの排出速度を画像で測定する。
✅胃内圧検査:カテーテルを使い、胃の収縮の強さやリズムを測る。
メリット
- 胃の動きが遅い(胃排出遅延)かどうかを正確に判断できる。
- 機能性ディスペプシアや胃不全麻痺の診断に有用。
デメリット
- シンチグラフィーは放射線を使用するため、妊娠中の人には実施できない。
- カテーテル検査は不快感があるため、患者の負担が大きい。
3)小腸内圧検査・大腸通過時間測定(小腸・大腸の運動検査)
腸の動きが遅すぎたり速すぎたりしないかを調べる検査です。
便秘や下痢の原因が腸の動きの異常によるものかを評価します。
✅大腸通過時間測定:カプセル型のマーカーを飲み込み、排出されるまでの時間をX線で測定する。
✅小腸・大腸内圧検査:カテーテルを挿入し、腸の圧力変化を測定する。
メリット
- 便秘や下痢の原因が腸の動きによるものかを正確に判断できる。
- 機能性便秘や過敏性腸症候群(IBS)の診断に有用。
デメリット
- 使用するため、妊婦には実施できない。
- カテーテル検査は侵襲的で不快感がある。
これらの検査によって消化管の「動きの異常」を評価することができます。
内視鏡やCT/MRIではわからない「機能的な異常」を診断することが出来ます。
✅アカラシア
✅機能性ディスペプシア
✅胃不全麻痺
✅過敏性腸症候群(IBS)
などの診断に有用です。
ただ、この検査に関しては外科医が関与することがほとんどなく消化器内科医独自の検査といえると思います。
特にこの検査に力を入れている病院や大学だったり、消化器内科を長く研修した医師であれば経験することもあると思いますが、私は機会に恵まれず経験したことはありません。
まとめ
今回は「入院編」として、大きな病院や入院が必要な消化器科における専門的な検査について解説しました。
外来で行える検査と異なり、入院検査はより専門性が高く、消化器科ならではの検査も多く含まれます。
特に 造影CT、MRI、ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)、EUS(超音波内視鏡) などは、診断精度の向上や治療計画の決定に不可欠な検査です。
これらの検査は、高度な医療設備や専門的な技術を必要とするため、一般のクリニックでは実施が難しい場合が多いですが、大病院と連携することで適切な検査を受けることができます。
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今日のもぐったー:
検査にも色々な検査がありますよね。医学が進歩すればするほど専門性が高くなり、自分の専門分野以外は一般的な素人目と変わらないところも多々あります。もちろん自分の患者さんに必要なものはしっかり学習するのでご心配なく。内視鏡検査などは、関東地方では外科医が検診で行ったりしますが、東北地方で働いていたときはやりませんでした。そこの地方の風土というか医局の風習で消化器外科医は内視鏡をやったりやらなかったりします。内視鏡を出来る方がいろんなことが出来るというメリットもありますが、見方をかえれば内視鏡を行わないほうが手術のことだけ専念していれば良い。とも考えられます。自分が何を目指したいかで選ぶものも変わりそうですね。ただ外科医が内視鏡のトレーニングを積めるのかどうかは、その地方でその職場に就職するまでおそらく知らないでしょうけど笑。個人的には胃カメラと大腸カメラを検診レベルで行えるようになりたいなと思いながら消化器医になりましたし、そのスキルは維持していきたいものですね。
それでは、また。
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