診察をスムーズに!消化器科で必ず聞かれる7つのポイント

今日のもぐったー: 病歴の聴取と身体診察はとても大事なものです。もちろん今の世の中非常に発達しているので、CTやMRIなど検査をすればある程度診断がつきますし、救急外来など時間が勝負のところでは、ぱっと全身のCTをとれば診断もついて、すぐ治療に当たれます。 ですが、どちらかをおざなりにしていると逆に気付けないこともあります。「虫垂炎かもしれません。」「胆嚢炎です、手術お願いします!!」など依頼の連絡がきて、実際診察してお腹をみてみると、明らかに既に手術をした形跡があったり。なんてこともあります。患者さんからよく話を聞いていても、身体診察をしていなくて気づかなかったり、逆に診察してるけど時間がなくてはしょってしまい十分に病歴を聴取できていなかったり。 長く医師をやっていても、原点は大事。ということですかね。 おなか不思議メモ
この記事では、医療機関で必ず聞かれる問診の内容を、7つの項目に分けて解説します。 これを押さえておけば、緊張しても質問に答えやすくなり、受診がスムーズになります。
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診察をスムーズに!消化器科で必ず聞かれる7つのポイント

診察をスムーズに!
消化器科で必ず聞かれる7つのポイント

「はじめまして。外科医のもぐたんです。確認のためにお名前をおっしゃってください。」

“〇〇と言います。よろしくお願いします。”

「今日はどんな症状でいらっしゃいましたか?」

“実は…。”

初めてのクリニックでは、きっとこのような会話から診察がスタートすることが多いですよね。

初めてのクリニックで、初めての先生。

“緊張してうまく答えられるかな” “ちゃんと伝えたいことを伝えられるかな”

そんな不安、ありますよね。体調が悪い中での受診だからこそ、なおさらです。

医師側からみても、問診というものは患者さんとの信頼関係を築く大事なコミュニケーションの第一歩です。

同時に、診断や治療の方針を決めるための重要なステップでもあります。

この記事では、医療機関で必ず聞かれる問診の内容を、7つの項目に分けて解説します。

これを押さえておけば、緊張しても質問に答えやすくなり、受診がスムーズになります。

主訴(最も気になる症状について)

主訴とは、今回受診する理由、つまり一番気になっている症状の事です。

例えば、「腹痛」「胸やけ」「食思不振」など、単語で言い表せるものもあれば、「身体がだるい」などなんとなく抽象的になってしまうこと、健康診断の結果で異常が見つかったなど、症状がない場合もあるかもしれません。

医師は主訴を短い医学用語でまとめています。

そのため、受診のきっかけとなった症状を簡潔に伝えることが重要です。

注意したいのは、主訴を話すときに情報が散らばらないようにすることです。

例えば腹痛が主訴なのに、

“腹痛は3日前からです。あ、そういえば一週間前から肩が痛くて…。確か、一ヶ月前から頭痛がしていたんだよね…。”

このように話が飛ぶと、医師も整理しにくくなり、診察時間が余計にかかることがあります。

もちろん、思わぬ病気が見つかる可能性もありますが、 まずは主訴を優先して伝える のがおすすめです。

あらかじめ診察前に、いつから、どんな症状が、どんなふうに起きたのかを整理しておき、聞かれた質問に正直に答えるようにしましょう。

現病歴(症状の始まりや経過について)

現病歴とは、主訴の症状が、いつから、どんなふうに始まり、どう変わってきたかの経過を話すことです。

医師は以下のポイントを押さえながら、症状について詳しく伺います。

Onset :発症機転 「いつから始まったのか」
Palliative & Provoke :寛解因子・増悪因子「どんな時に良くなったりor悪くなったりするか」
Quality & Quantity :性状・強さ 「どのような症状で・どれくらいの強さか」
Region :部位 「どこが痛むのか」
Symptoms :随伴症状 「他に伴う症状はあるのか」
Time course :時系列 「初めから今までどんな変化をしたか」

頭文字をとって「OPQRST」というテクニックです。覚える必要はありません。

医学生や研修医はテストに出ます笑。

これらの情報は、医師が診断を進める上で非常に重要です。

訴え・症状というストーリーを1つの物語のように医師に話すことが出来れば、医師も診断しやすくなります。

といっても、急にこんな専門用語はハードル高いよ!!と思われると思います。

実際、医師も「あれ?次に聞くのはコレだったっけ?」と考えながら聞いたりしています笑

もし可能であれば、事前にメモにまとめておくと、落ち着いて説明しやすくなります。

診察では、メモを見ながら説明しても大丈夫です。

医師がカルテにまとめながらさらに深掘りして質問してくれるので、リラックスして受診してください。

既往歴(過去にかかった病気、現在治療中の病気や手術について)

既往歴とは、過去にかかった病気や、現在治療中の病気、そして受けた手術についてまとめたものです。

風邪やインフルエンザなどの一時的な病気ではなく、通院や入院が必要だった病気が対象になります。

医師にとっては診断の手がかりとなる、非常に重要な情報です。

注意すべき事として、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病は、内服治療をしているため数値が正常化し、「治った」と思われがちです。

内服治療中であること自体が病気の存在を示していますので、必ず伝えてください。

消化器の診察では、過去の手術歴が特に重要です。

虫垂炎(いわゆる盲腸)での虫垂切除や、胆嚢摘出、帝王切開などは、患者さんも伝え忘れることが多いです。

内科や救急での診察時に聞かれなかったとしても、外科医がおなかの診察で初めて手術痕に気づく…なんてことも少なくありません。

医師が聞き忘れていても、必ず伝えるようにしてください。

既往歴は初診時に必ず確認される項目です。自分の病気や手術の歴史を事前にメモにまとめておくと、スムーズに説明できて安心です。

家族歴(血縁者がかかった病気について)

家族歴とは、血縁者や同居している家族がかかった病気について確認を行うことです。

血縁者の病気は、遺伝性の要因や体質、さらには生活習慣の影響が関わる場合があります。

例えば、がんや心臓・血管系の病気には遺伝の影響が関与することがあります。

同じ生活環境で過ごすことにより、家族内で生活習慣病や感染症が共有される場合があります。


例えば、生活習慣病では、家族全員が似たような食事や運動習慣を持つことで高血圧や糖尿病などのリスクが高まることがあります。


また、感染症では、家族全員が同じものを食べて腹痛や下痢を起こすケースが見られます。


また、ウイルス性肝炎のように、母親が知らないうちに感染していて出産時に子どもに伝染する「母子感染」の例もあります。

血縁者(両親・兄弟・祖父母など)の病歴は、遺伝や体質の手がかりになるため、特に がん・心臓病・糖尿病 などがある場合は伝えましょう。

なお、夫やその親戚の病歴は遺伝とは関係ないので気にしなくて大丈夫です(笑)

内服歴(現在服用中の薬やサプリメントについて)

内服歴とは、現在服用している薬や過去に継続して服用していた薬の記録の事です。

まずお伝えしたいのは、「お薬手帳を必ず持参してください!」ということです。

特に初診時や救急外来に受診した際には必ず持参してもらいたい物になります。

医師が内服歴を確認する理由は主に次の3つです。

  • 薬の相性(飲み合わせ)の確認
  • 服薬が原因での症状などの有無
  • 検査や手術の前に調整する薬の有無

などがあります。

薬には単独で飲めるものもあれば、副作用を防ぐために別の薬を一緒に飲む必要があるものもあります。

代表的なものだとステロイドや鎮静薬、抗血小板薬(血液サラサラにする薬)などは胃十二指腸潰瘍などを多発することがあり胃薬を併用します。

逆にその胃薬を長期服用していることが原因で胃酸が多くなり胃の調子が悪くなったりすることや、薬の副作用として「咳」を認め、これを風邪と思い込んでいたりするケースもあります。

また私達外科医にとって、「血液サラサラの薬」は手術や検査の際に大きな影響を与えます。

出血しやすくなるため、休薬や代替薬への変更を検討することがあります。

そもそも患者さん自身が、自分がどんな病気で薬を飲んでいるのか意識していないこともあります。

実際、お薬手帳を見て初めて「今も治療中だったのか」と気づくケースも珍しくありません。

特に内服をすることで数値が正常になってしまい、治療中であるという自覚が抜けてしまうものとしては高血圧、糖尿病、脂質代謝異常(要は高脂血症)はよく見受けられます。

私は診察中、「降圧薬を飲んでいるということは、高血圧の治療中ですね?」と確認しながら進めることがあります。

そのようなときは大抵、
“あー。そういえば以前は血圧高かったけど薬飲んでるから今は正常だね。”
と返ってきます。

それは立派な高血圧といいます笑

サプリメントはお薬手帳には載りませんが、意外にも体調不良の原因になっていることがあります。飲んでいるものがあれば、必ず医師に伝えてください。

アレルギー歴(食べ物や薬のアレルギーについて)

アレルギー歴とは、過去にアレルギー反応を起こしたことがある物質(食べ物・薬・環境要因など)や、それによる症状の記録のことです。

アレルギー反応は、皮疹やかゆみなどの軽いものから、命に関わるアナフィラキシーショックまで様々です。

アレルギーの原因が はっきりしないことも多く、「たぶん〇〇が原因かな」と自己判断してしまうことがあります。

医療者側にとってはとても重要な情報のため、
医師に診断されたもの、注意されたものを「必ず正確に伝えてください」。

検査中に 皮疹やくしゃみが出ると、看護師や検査技師が「アレルギーかもしれませんね」と伝えることがあります。

もちろんそのような方々に見てもらうことが医師より発見が早くなり良いことですが、最終的には医師に判断してもらうようにしましょう。
医師が問診でアレルギー歴を確認するのは、以下の理由からです。

  • 薬剤アレルギーの確認 → 処方する薬が安全かどうか
  • 食物アレルギーの確認 → 栄養指導や入院中の食事制限の参考
  • 麻酔・造影剤アレルギーの確認 → 手術や検査時のリスク回避
  • ラテックスアレルギーの確認 → 手術用手袋や医療器具の材質選択

アレルギーには様々な種類がありますが、代表的なものを挙げていきます。

✅ 薬剤アレルギー → 抗生物質(ペニシリン、セフェム系)、解熱鎮痛薬(アスピリン、ロキソニン) など
✅ 食物アレルギー → 卵、乳製品、小麦、そば、ナッツ、エビ・カニ など
✅ 花粉症 → スギ、ヒノキ、ブタクサ、イネ科 など
✅ ハウスダスト・ダニ → ほこり、カビ、ダニ など
✅ 動物アレルギー → 犬・猫の毛、フケ など
✅ 金属アレルギー → アクセサリー、歯科金属(銀歯など)
✅ ラテックスアレルギー → ゴム手袋、医療器具(カテーテルなど)
✅ 麻酔・造影剤アレルギー → 局所麻酔薬、造影剤(CT・MRI検査時)

医療の現場で特に注意されて扱われるのは、麻酔、造影剤を含む薬剤、食物、ラテックスあたりでしょう。

消化器外科医の観点からだと、造影剤の使用の有無が診断や治療にとても重要になってきます。

例えば 造影剤使用の前後で偶然くしゃみをしただけで、「アレルギー」と登録されてしまうこともあります。

その結果、造影剤を使えなくなり、重篤な病気の診断が遅れることや、毎回ステロイドなどの予防薬が必要になるケースもあります。

もちろん病院内のアレルギー登録というのは万一のことがあってはならないセーフティーネットなので制度的に必要なものですし、それでヒヤリハットを回避できます。

しかし本当に原因薬剤として妥当なのかは主治医に判断してもらうのが良いと思います。

ラテックスアレルギーはあまり一般的には馴染みがないと思いますが、天然ゴムのアレルギーで医療器具には多く含まれています。

代表的なものに、手術で使用するゴム手袋があります。手術中に直接臓器に触れることでアレルギー反応が起こることがあります

ラテックスアレルギーはゴム以外の特定の食べ物に対してもアレルギー反応を引き起こすことが知られています。

バナナ、アボガド、キウイ、栗、パパイヤ、マンゴー、メロン、パイナップル、桃、トマト
などで出ることが知られています。

今はラテックスフリーの素材の医療器具もありますので、これらにアレルギーがあっても治療を受けれないわけではないので安心してください。

ラテックスアレルギーに関して詳しく知りたい方は下記の「日本アレルギー学会」や「アレルギーポータル」サイトを御覧ください。

ラテックスアレルギー/Q&A|一般社団法人日本アレルギー学会
アレルギー対策 | ラテックスアレルギー - アレルギーポータル
普段からの予防法などを解説しています。

医療の現場ではアレルギー情報が非常に重要になりますので、以下のような情報をメモしておくと良いでしょう。

✔ 何に対してアレルギーがあるのか?(薬・食べ物・環境要因 など)
✔ どんな症状が出たのか?(じんましん、呼吸困難 など)
✔ いつ発症したか?(子供の頃?最近?)
✔ 過去に医療機関でアレルギーを指摘されたことがあるか?


また、薬剤アレルギーに関しては 「お薬手帳」に記載しておく のも非常に有効です。

生活歴(飲酒・喫煙・職場や家庭環境・妊娠などについて)

普段の生活習慣や環境が健康にどんな影響を与えているかを知るための情報です。

具体的には以下のポイントを確認します

喫煙歴 → 喫煙の有無・本数・期間(例:1日20本を10年など)
飲酒歴 → 飲酒の頻度・量(例:週に3回、ビール500mLなど)
職業歴 → 過去・現在の仕事(例:工場勤務、医療職など)
運動習慣 → 運動の種類・頻度(例:週2回ジム、通勤で徒歩30分)
海外渡航歴 → 海外での滞在歴や長期出張(例:東南アジアに3年間駐在)
ペットの飼育 → 動物と接触する機会(例:猫を飼っている)
住環境 → 居住地域や住宅の環境(例:湿気が多い、カビが発生しやすいなど)
月経の周期・症状の強さ・妊娠の有無

生活歴は現在かかっている疾患の原因であったり、今後の病気の予防や治療方針を決める上で重要な情報となります。

恥ずかしくて隠してしまったり、少なく見積もってしまうことで情報が正しく伝わらず、診断・治療に影響が出てしまうこともあります。

正しく医療者と共有するようにしましょう。

まとめ

診察時にスムーズに症状を伝えるためには、医師からよく聞かれる7つのポイントを押さえておくことが大切です。
主訴(最も気になる症状)
   →受診のきっかけとなった症状を簡潔に伝える。
現病歴(症状の始まりや経過)
   →いつから、どのように症状が始まり、どう変化したかを整理する。
既往歴(過去の病気や手術歴)
   →治療中の病気や手術歴は必ず伝える。特に消化器系の手術歴は重要。
家族歴(血縁者の病気)
   →がんや生活習慣病など、遺伝的な影響を考慮するために必要。
内服歴(服用中の薬やサプリメント)
   →お薬手帳を持参し、服薬中の薬やサプリを正確に伝える。
アレルギー歴(薬・食べ物・環境要因)
   →医師に診断されたものを正確に伝え、特に薬剤アレルギーは慎重に確認。
生活歴(飲酒・喫煙・生活環境など)
   →日常生活の習慣が病気に関与することもあるため、正直に話す。


診察の際には、これらの情報を順序立てて話すことで、医師もスムーズに診断を進められます。
ただ、これらのこと全て自分で把握しながら逐一説明するのは医師でも難しいと思います。
事前にメモを作成したり、自分なりにまとめておくことで診察時にも活用できますし、自分の健康を振り返ることにも繋がりますのでぜひ実践してみてください。

今日のもぐったー:
病歴の聴取と身体診察はとても大事なものです。もちろん今の世の中非常に発達しているので、CTやMRIなど検査をすればある程度診断がつきますし、救急外来など時間が勝負のところでは、ぱっと全身のCTをとれば診断もついて、すぐ治療に当たれます。
ですが、どちらかをおざなりにしていると逆に気付けないこともあります。「虫垂炎かもしれません。」「胆嚢炎です、手術お願いします!!」など依頼の連絡がきて、実際診察してお腹をみてみると、明らかに既に手術をした形跡があったり。なんてこともあります。患者さんからよく話を聞いていても、身体診察をしていなくて気づかなかったり、逆に診察してるけど時間がなくてはしょってしまい十分に病歴を聴取できていなかったり。
長く医師をやっていても、原点は大事。ということですかね。

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