NHKスペシャルをみて現役外科医が泣きそうになった話

NHKスペシャルをみて現役外科医が泣きそうになった話 徒然不思議メモ
NHKスペシャルをみて現役外科医が泣きそうになった話
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NHKスペシャルをみて現役外科医が泣きそうになった話

皆さんNHKスペシャルをご覧になりましたか?

こんにちは。

外科医のもぐたんです。

皆さんご覧になりましたか?

2025年7月13日に放送されたNHKスペシャル「命を診る 心を診る」

命を診る 心を診る 〜小児集中治療室の日々〜 - NHKスペシャル
東京・世田谷の国立成育医療研究センター。その小児集中治療室・PICUは、心臓や肝臓に重い疾患を抱えた子どもを救う最後の砦だ。医師が向き合うのは病気だけではない。辛い治療に苦しむ子どもの心や、募る親の不安にも、心理ケアの専門家と連携して手段を...

またしても今回リアタイを見逃して(当直だったんでごめんなさい汗)、NHK+で見逃し配信で見ました。

いや、もう…。

凄まじかったです。

どこかのネット記事で凄まじいドキュメンタリーだったという記事を目にしましたが(週刊現代だったかな?)、

すみません、本当に凄まじくて、他に言葉が浮かびませんでした(語彙力のなさよ…)

今回も私なりに思うこと少々、感想でも書いていこうかと思います。

以下、本編の内容も含みますので、もし気になる方はNHK+での見逃し配信をご覧になってください。

NHK+はこちらから↓↓↓(案件などではありません笑)

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国立成育医療研究センターPICUの密着ドキュメンタリー

番組の内容はこんな感じ

舞台は言わずと知れた日本有数の小児医療センターである国立成育医療研究センターPICU、そこでの半年間に及ぶ密着ドキュメンタリーでした。

なんと1人のディレクターがずっと密着で撮ったものだったんですって。

番組を通して、その人の本気度が伺える場面がところどころ見受けられたな。という印象です。

成育医療研究センターといえば、専門外の私は詳しくは知りませんが、とても優秀な研修医上がり(研修医も?)の若手の先生が優秀な小児科医になるため勉強もとい修行に行くところ、というイメージでした。

私は肝胆膵外科で少しの間ですが移植に携わっていた時期もありますので小児肝移植を行っている施設、というイメージでもあります。

奇しくも内容は肝移植の患児に関することでしたね。

ていうか、もうね、子どもの話題って時点でダメですよね。

自分が親になってから涙腺緩みっぱなしで、こんなん見たら泣いてしまうに決まっているじゃないですか😭

でも、内容は子どもだから~って微笑ましく見れるようなものではなく、正に壮絶の一言。

冒頭からPICU内での重症患児の対応や気管挿管、緊急対応などが映し出されます。

その中でも、主に2人の患児に焦点を当てながら、小児医療の現状、問題点などについて話が進んでいきました。

肝移植を待つ子ども

生まれてすぐからアンモニアが体内に蓄積してしまう疾患を患っている患児、たろうちゃん。

疾患名はわかりませんが、先天性の代謝異常の疾患か、肝疾患なんでしょうか。

尿素サイクル異常症という疾患はありますが定かではありません。

根本治療としては、”肝移植”が必要な状態とのこと。

しかしまだ生まれて間もない状態で、移植を行える身体の大きさもなく、問題を抱えながら医学的に医学の力をもって成長させていかなければなりません。

それがどんなに難しいことか。

2キロ程度の体重を6キロに増やす。

これが肝移植に進む条件の1つとなる。

子どもって勝手に食べて、勝手に成長すると、勝手に体重も増えていきますよね。

まー勝手にという言葉は乱暴だとしても(親が愛情込めて育ててますからね)、体重って増えていくイメージがあると思います。

特に新生児期から乳幼児にかけてなんて生物学的に驚くべきスピードで身長も体重も増えていくものです。

だって体重が倍々になりますからね。

でも、病気を抱えていると体重って増やすのも一苦労なんですよね。

むしろしっかり管理していかなければ簡単に減ってしまいます。

大人の数十キロの体重が何キロ減った、というのと、何キロの子どもが何キロ減った、というのは身体に対する割合としても全然違って、死活問題なのです。

特に口から栄養を取る練習をしていない赤ちゃんでは点滴や経管栄養から1ml単位での管理が必要になります。

栄養分だけでなく、身体に必要なミネラル(電解質といいます)なども全て計算に入れて、です。

この時点で、管理側からの視点で、もうすごい!!の一言なんですけど。

そうこうしているうちに、カテーテルなどを含む各種感染や合併症、原病の問題が重くのしかかってきます。

たろうちゃんも例外でなく、腸管切除が必要な手術を要することになってしまいます。

手術は無事に終わるのですが、その時のお父さんの、

「今日一晩生き延びれた!!」という言葉がとても胸に響きます。

肝移植を終えた子ども

一方で、地方から肝移植を行って、術後管理を行っていたゆうせいくん。

肝移植そのものは無事に終わってはいるものの、術後管理が大変です。

ベッド上で処置されている、ゆうせいくんの足や体格。

今までがどれだけ壮絶だったかを物語っています。

それを隠さず映せる番組側の度胸がすごいなと思いました。

心停止で胸骨圧迫している映像もモザイクなどなく流していましたしね。

本気度が伺えます。

肝移植って、本当に管理が大変で。

大人でも大変なのに、ましてや子どもなんて…て感じです。

小児医療とは

小児医療の問題点というのもトピックの1つになります。

ここで出てくる、「国は子どもの命について決して優しくない」「子どもは国の財産」という言葉がとても刺さります。

ちょうど参議院選でも話題ですが。

ある政党の党首が、自分の子供なんか病院受診をあまりしないから、子どもの医療費無料をなくして、各子どもに10万給付、なんて話も飛び出したりしていますが。

そういうことじゃないんですよね。

これは政治ブログではないのでこれ以上の言及は避けますが。

ここまでの治療をやってこれ全て請求きたらとんでもないことになるのは容易に想像がつきます。

もちろん、緩和医療や延命に関する医療費の問題点というのはありますが、この重症管理医療とそれを同義にしてはいけないですよね。

線引は難しいですが、だからといって一括りにするのが良いとも思えません。

だって子どもは国の宝なんですから。

研修医の頃、小児科を目指していた友人が、今はもちろん立派な小児専門医ですが、

「子どもが病気だったら、大人と違って迷うことなく救うということを選べる。」と言っていたことを今でも覚えています。

もちろん小児医療の裏表をよく知った今ではそんなことは言わないでしょうけど、けれどもその言葉は小児科を目指さない私にとってもとても印象深い、納得する言葉でした。

PICUに全国から患者が集まる理由

PICU(Pediatric Intensive Care Unit)はいわゆる小児の集中治療室ですが、その数は多くなく、全国に38施設なんだそうです。

自分は長い間大学病院にいたので、NICUやPICUといったものが比較的当たり前にあるもの、例えば都道府県に1つずつくらい、と思っていたので少し驚きました。

しかもそれはかなり都市部に集中していて、東北や北陸にはパッと見全然ないな、と衝撃でした。

そりゃーもちろん地方の方が子どもは少ないし、その必要性は薄れますけど、その自治体に住んでいる子どもで、いざそのような治療が必要な立場になったら心細い、というか絶望しますよね。

親であれば、なおさら。

自分のことでなく、自分の子どものことですから。

私も長女が生まれた時に関東のある県に出向していましたが、そこは医師の数が少ないことで有名な県の1つでした。

実際、当時地域には小児科は22時以降に診てくれる病院やクリニックがありませんでした。

夜間救急がやっている病院でもwalk inでいくと、子どもという理由で断られる。

そうするともう救急車を呼んで病院を選定してもらうしかないのです。

関東に住んでてまさかこんなことある!?と思った記憶があります。

番組の結末として

番組は佳境に入り、やはりたろうちゃんの病状が思わしくなく、医師の中での治療方針に関して議論になります。

ここでは各専門科の代表的な立ち位置のカンファなんでしょうけど、皆さんフラットに議論されているのが印象的でした。

やはりカンファとなると、上の意見というか、下が意見をしても結局全体的に上の方針になりがち、といいますか、上の意向を聞かざるを得ない状況というか、そういうこともありがちですが、そのような雰囲気はなく、いけるところまで頑張る、症状緩和的な側面、いずれからも冷静に状況把握しているのが素敵だなと思いました。

当然、助かる助からないの観点だけでなく、本人の尊厳や家族の気持ちだけでなく、医療費や医療資源、その他諸々の社会的な葛藤も含め議論されていたと思いますし。

もちろん、それぞれが一騎当千だからバランスよく回るというのはあると思います。

外科医の先生が、むしろ手術したときより今の方が頑張れる状況にある、といった意見はやはり外科医なんだなと思いました。

きっと自分が手術した立場であればそうだったでしょう。

最終的には、たろうちゃんは移植を待つことなく旅立ったわけですが、お父さんの出演TVをみんなで見たり、最後までみんなで寄り添ったり。

まーそこは番組の演出なのかもしれませんし、みんな忙しいし毎回そんなことやってられないかもしれませんが。

でもテレビ越しだとしても和やかな雰囲気を本人が感じ取れたならそれはきっと良いことなのでしょう。

そして最後のエンゼルケアを済ませたかわいい姿で写っているのが個人的にはすごく良かったです。

この姿はなかなか映せないですしご両親も勇気がいったはずです。

でもとても綺麗な姿だったと思います。

番組を通して、身体的にだけでなく心理的にも両親、家族などにも臨床心理士?や緩和ケアの先生が寄り添っているのがケアが細やかで羨ましかったですね。

外科医の先生が今回のことを省みていたのをみて、とてもかっこ良いなと思いました。

一方、無事にリハビリが済み、歩けるようになり自宅に帰れるようになったゆうせいくん。

歩いてPICUに来て挨拶だなんて…。

その場にいたら泣いちゃう。。。

スタッフ皆に迎えられ、本人の一生の記憶に残る出来事になったことでしょう。

移植をライフワークに選ばなかった私ですが、これが肝移植だし、素晴らしい医療ではあるんだよな。

と思いましたとさ。

まとめ

いかがだったでしょうか。

といってもほぼ私の感想でしたね😂

全体的にとても陳腐な感想になってしまいましたが笑

個人的には前回のNHKスペシャルの医療の未来のどうしようもない感に比べたら、まだ救いがあるというか、医療頑張ってるな。という感じがしてとても良かったです。

以前のNHKスペシャルの感想はこちらから↓↓↓

医療が今後どうなっていくかはわかりませんが、子どもの未来が守られていく世界であることを祈るばかりです。

もし、内容が気になる方は、7月17日午前0時55分から再放送があるようなのでぜひ視聴してみてください。

もちろんNHK+の見逃し配信でも1週間見れますのでぜひどうぞ笑

それではまた。

さよなら、さよなら、さよならー☺️

今日のもぐったー:
そういえば、最後のさよなら、さよなら、さよならー☺️ってなんのセリフかご存知ですか?昭和から平成初期にTVを見ていた方などはご存知かもしれません。そう、日曜洋画劇場の淀川長治さんの解説の最後の挨拶です。あの解説と最後の終わり方好きだったんですよねぇ。日曜洋画劇場そのものが大好きでしたけど、あの最後の挨拶を聞くと、一週間が終わってまた明日から新しい週が始まるんだなーって感じてました。なので、読後感良く終わってもらうために私もサヨナラおじさんを目指します笑 さよなら、さよなら、さよならー☺️(くどい