これって病気のサイン?外科医が教える消化器科受診のコツ②

外科医が教える消化器科受診のコツ2 おなか不思議メモ
「こんな症状があるときは消化器科を受診すべき」というポイントをわかりやすく解説していきます。後半戦
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消化器科を受診すべき症状

こんにちは。外科医のもぐたんです。

今回も前回に引き続き、「こんな症状があるときは消化器科を受診すべき」というポイントを

解説していきます。

前半は、

  • 腹痛(おなかの痛み)
  • 胸やけ・胃もたれ
  • 便通異常(便秘や下痢)
  • 嘔気・嘔吐(吐き気や嘔吐)
  • 食欲低下

について話をしてきました。

後半は、

  • 体重減少
  • 黄疸(皮膚や目が黄色い・かゆい)
  • 血便(便に血が混じる)・便が黒い
  • 腹部膨満・違和感(お腹の張りや違和感)
  • 発熱を伴う腹痛(お腹の痛み+熱)

について解説していきます。

前回の記事はこちらから↓↓↓

体重減少

意図せず体重が減少することをいい、意図的に体重を減らすダイエットなどとは区別されます。

  • 前述の食欲低下に伴うエネルギー摂取の不足
  • エネルギー消費の過剰状態
  • 消化器系の異常による栄養吸収障害
  • 全身の炎症による代謝、消費エネルギーの亢進
  • 薬物の影響などが原因となります。

上記により、摂取エネルギーより消費エネルギーが増大すること、基礎代謝が亢進すること、癌や炎症により、筋肉分解や脂肪減少を促進する物質が分泌されることで引き起こされます。

特に意図せず数ヶ月で5-10%の体重減少がある場合は早急に診察を受けることをお勧めします。

黄疸(皮膚や目が黄色い・かゆい)

皮膚、粘膜、眼球結膜(白目)が黄色くなることを黄疸といいます。

かゆみも伴います。

血液の中のビリルビンという物質が増えることが原因で起こります。

ビリルビンという物質は血液の中で産生されて、肝臓の中で代謝され形を変えて、胆汁という消化液の成分となり、最終的に便や尿から排出されていきます。

血液、肝臓、胆汁が流れる経路、このいずれかに問題が起こると黄疸が発生することになります。

  • 血液の中でビリルビンが増える状態:貧血や輸血など
  • 肝臓の障害でビリルビンが増える状態:肝炎や肝硬変など
  • 胆汁の排泄がうまくいかない状態:胆道(胆汁が流れるところ)が石や腫瘍(癌など)で詰まる

消化器系としては、肝臓、胆嚢、胆管など胆汁にまつわるトラブルで発生することがほとんどです。

膵臓の影響で胆汁の流れが悪くなることで起こることもあります。

肝胆膵領域は私の専門分野ですね。

ビリルビンの代謝経路は専門的で難しいので、需要があれば別の項目で解説したいと思います。

需要があればですが笑

黄疸がでたら深刻な病気のサインのことがありますので必ず医療機関を受診しましょう。

血便(便に血が混じる)・便が黒い

便に血が混じる状態のことを言います。

消化管(食道から大腸までのどこかの臓器)からの出血が原因で起こります。

一般的に

  • タールのような黒色便:胃・十二指腸を通過するような出血(胃酸や消化酵素で血液が黒く変色するため)
  • 鮮血に近い便:肛門に近いところからの出血

が出ることが多いとされています。

もちろん例外もありますので一概にはいえませんが、どこから出血しているのかを予測して検査の予定を立てることになります。

胃や十二指腸を疑うタール便では胃カメラ、

大腸や肛門に近い部位を疑う場合は大腸カメラ、

どちらでもない場合は小腸からの出血を考えカプセル内視鏡などを行うことになります。

小腸の検査は胃カメラも大腸カメラも到達できない部位で少し特殊な検査となります。

最近では小腸内視鏡というものもありますが特殊なため大きな病院でしか行われないことも多いです。

医学用語では出血そのものが肛門から出てくる「下血」とは区別されています。

便ではなく血液の塊が出てくるのです。…恐ろしいですね。

すぐ受診しましょう。

腹部膨満・違和感(お腹の張りや違和感)

腹部が張ったように感じたり、重苦しい、詰まった感じがする状態のことを指します。

多くは消化管内のガスや液体の貯留、内臓の機能異常が関与していることが多いです。

  • ガスが貯留する原因:腸管内ガスの産生亢進、蠕動運動低下による排出障害
  • 液体が貯留する原因:腸管内液の貯留や、腹腔内(腸管のそと)の液体貯留(腹水)
  • 臓器の腫大、それによる周囲の圧迫:消化器臓器、周辺臓器
  • 腫瘍や嚢胞(水風船みたいなもの)が腸管を圧迫
  • 腸管の運動機能の低下による内容物の停滞

“お腹が張ります”

実は医師にとって一番把握しづらい訴えの1つかもしれません。

何が原因で起きているのか判断するのがとても難しい訴えです。

なぜならとても抽象的だからです。

また辛い場所の把握が困難な場合が多く、臓器を特定することが難しいです。

臓器のせいじゃない可能性も考えなくてはなりません。

そしてなんとなく改善してしまっていることもあります。

持続するような場合は何かしらの原因が隠れている可能性があるため、受診が必要となることがあります。

発熱を伴う腹痛(お腹の痛み+熱)

最初の項目にあった「腹痛」に加え、発熱を認める状態です。

これらに関連性がある場合、手術などを含め、緊急で処置を行わないといけない場合があります。

発熱を伴うものの多くは炎症反応や感染により生じます。

感染性疾患:急性胃腸炎、胆嚢炎、虫垂炎、憩室炎など
炎症性疾患:潰瘍性大腸炎、クローン病など
虚血性疾患:腸間膜動脈閉塞症、腸間膜静脈血栓症、絞扼性腸閉塞、虚血性腸炎など

消化器臓器ではない場合、婦人科臓器や泌尿器科臓器の場合や全身性感染などから発熱と腹痛を起こす場合もあります。

抗生剤など全身治療のこともありますが、手術や局所の穿刺ドレナージといった外科的手技を必要とすることもあり、速やかな専門医の診察が大事になります。

すぐ受診しましょう。

まとめ

消化器症状は、ちょっとした不調から命に関わる重大な病気まで、さまざまな原因が潜んでいます。

この記事では、受診の目安となる主な消化器症状についてシンプルに解説しました。

小さなサインを見逃さず、気になる症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。

健康を守るのは、まず一歩踏み出すことから!

今日のもぐったー:

昔々小学生の頃、りんごを食べてから夕方ミニバスに行きました。普通にプレーをしていましたがなんとなくおなかに違和感を感じていて、”りんごが良くなかったのかな?”とか感じていたのを覚えています。翌日はもう朝からおなかが痛くて学校どころではありませんでした。登校時間には寝ていましたが、二度寝して起きてもやはり腹痛が続いており、少年もぐたんは「お母さん!!僕盲腸かも!!??」と自己診断をしました。なぜか母は子どもの戯言を信じてくれて、すぐに小児科へ連れていってくれ…。本当に虫垂炎(いわゆる盲腸のこと)と診断され即日入院、手術となったのです。医師もぐたんが誕生した瞬間でした。

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